再発LP、Moondance / Van Morrisonはいいです。

イメージ 1

イメージ 2

(アウタースリーブにはいつものようにRTIのステッカーあり。レーベルは左が[S.S.S.]盤。右が今回の再発盤。初期のオリジナル盤のオリーブタイプを模している。センターがずれているのが玉に傷だね~)


好評のWarner/Rhinoの再発LPシリーズから、今回はMoondanceをゲット。マスタリングはもちろんS.Hoffman、カティングはKevin Gray。

実は今回これを買うかどうかはかなり迷った。

というのも、20年前に買った[SUPER SAVER Series]のMoondanceがどうにも好きになれなかったから。一緒に買ったAstral Weekもまるでダメ。何かダメかと言うと、ずばり音そのもの。バックの演奏とモリソンのボーカルが完全に分離していて、まるで演歌か歌謡曲のように聞こえるというのは辛かった。言うなれば、エンゲルベルト・フンパーディンクのレコードのよう。しかも個人的にはフンパーディンクは好きなのに、このレコードは好きになれないというか、「入っていけない」アルバムで、もう何度聞いてもどうしようもなかった。

それから20年の歳月が流れ・・・、例の掲示板で「Astral Weekがどうしてもわからん」というスレが立っていたので再びそのLPを聞いてみた。のだがやはりダメ。だがこれは絶対に何かおかしいと思い、知人にその話をしたらCDを貸してくれた。

そしてそれを聞いてみると・・・、なんじゃこりゃ~、全然違う!! バックの演奏とボーカルがちゃんと一つにまとまっているし、演歌くさいノリもない。なによりこちらがモリソンの世界に「入っていける」。
試しにMoondanceのCDも借りて聞いてみると、、、うわ~、やはり全然違う。これなら問題ない、、、どころか、俺の20年を返せ! と思わず叫んでしまいたいくらい別物。

いやはや、まさに「マスタリングが全て」であることを改めて実感した瞬間だった。

要するに[S.S.S.]のレコードはマスタリングがダメダメだったと、そういうこと。そのダメダメバージョンのMoondanceは上の写真の左側。レーベルも左側(このレコを中古屋さんで見かけても、絶対に買ってはいけません!)。

そしていざ購入したこの再発盤、いやはや、針を落としてすぐにその違いに気付く。「これなら聞ける」と思ったCDよりも、更に全体的に音が太く、特に低音の厚みがかなりある(演奏もモリソンの声も)。なによりも音楽のナチュラルなフローが実に心地よい。従って[S.S.S.]盤は、これを聞いた瞬間にただの無用の黒い塩ビ盤と化した。どこかでピーター・バラカン氏が「MoondanceのA面は5曲でひとつの組曲のようなもの」と書いていたが、この再発盤ではまさにそれが実感できる。うーん、嬉しい。

ちなみに、A面の最後、5曲目のInto the Mysticはタンバリンが入っているバージョン。CDバージョン(日本盤のWPCR-602)にはこれが入っていない。曲の最後に微かに聞こえる程度。[S.S.S.]盤のこの曲もタンバリンが入っていないバージョン。エンディングにもタンバリンの音は全く入っていない。なのでオリジナル盤(未確認)を持っていなくてバージョンが気になる人にも、この盤はお勧め。

今回マスタリングを行ったホフマン氏によれば、MoondanceのLPマスターは最初からEQマスターで2:1のリミッターがかかっていたと。で、今回はEQマスターの前の世代のオリジナルマスターを使用している。ただし彼にしてもこのアルバムのマスタリングは難儀だったらしく、いろいろEQはいじっているらしい。しかも一度カッティングしたメタルパーツが破損してしまい、2008年11月6日に両面ともにリカットしなければならなかった、と。

そのせいかどうかはわからないが、発売されたこのLPのB面のdeadwaxには、ホフマンのイニシャルが刻印されていない。A面はいつも通りKGの横にSHが刻印されている。どうやらKevinが単に記入し忘れただけらしいのだが……。(本当か?)