Beatles:ラウドカットの謎?(Rubber Soul)

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先日、知人とビートルズのLPについて話をしていたら、「Rubber Soulのラウドカットだけど、あれって何なの?」と質問された。質問した本人もラウドカット盤を所有しているので、いまひとつその質問の意味が汲み取れなかったのだが、どうやら、マトリックス1の盤を聞いてみたが、どうにもそのラウドさ加減がピンとこない、ということらしい。

むむ? もしかして、“ラウドカット”は単なる思い込みだったのか? と、疑問に感じたので、今更ながらUKオリジナル盤のマトリックス1と4を聞いてみた。(ちょっと渋々です。)

まずA面、Drive My Carから。

最初にマト4、次にマト1を聞いてみた。
うーん、確かにそれほど大きな違いはない。

だが、よーく聞き続けて比べていくと、マト1では、例えばNowhere Manの出だしからボーカルが前面に押し出されている感じがするし、The Wordの最後のオルガンの音はちょっと金属的なまでに強烈。やっぱり違うな~。

続いてB面へ。

B3のI'm Looking Through You以降は、はっきりと違いが分かる。特にマト1のI'm Looking Through Youはボーカルが前に出てきており、その差は歴然。この曲であればブラインドテストでもほぼ間違いなく判別できると思う。マト4では、ボーカルが後ろに引っ込んだ感じになる。

それ以降の曲でも、同じように特にボーカルの音圧、ハイハットの音圧などが顕著に大きめに感じられるし、音が太めとも言える。

そこで、例のホフマン掲示板を検索した所、VUメーターで測定する限り、音量の違いはほとんどない(と言うか、“全くない”)、との書き込みが多々見つかった。違うのは音量ではなく、音圧である、と。つまり、カッティングの際に施されたリミッター/コンプレッサーの度合いによる違いだということらしい。それが人間の聴覚上、音が大きいように聞こえる、と。

実際の所、自分の耳で聞く限り、B3以降の曲は明らかに音が大きく感じられるのだが、音量という意味ではそうではありませんよ、音量がラウドなのではありませんよ、ということだ。

うーむ。この“ラウド”感については(今ひとつ釈然としないものの)自前でレコからPCに音を取り込んでデータ化して波形チェックするまでは、とりあえずそういう解釈に従うしかあるまい。

ところで、その海外掲示板では、マト1はコンプレッサーをかけ過ぎで音が濁っている、だからマト4以降の方が音が良い、という意見が大勢を占めていた。しかし、個人的な感覚として、それには同意しかねる。

と言っても、ここから先は個人の好みの範疇なので……、うーん、まぁ、どうでもいい話ではあるのだが……。

で、その個人の好みの話をすると、唐突ながら、個人的にはビートルズのアルバムの中で、Rubber Soulはそれほど好きな方ではない。理由は、Rubber Soulは音が“眠い”感じがするから。初めてこのアルバムを聞いたのが国旗帯のラバーソウルだったのだが、その音質の印象が刷り込まれているからかもしれない(あるいはジョンのNowegian WoodやIn My Life、それにジャケ写の印象のせいなのかもしれないが)。

だが、Rubber Soulのマト1はそんな“眠気”を吹き飛ばす、エッジの立った音。かといって、聞き疲れもしない。ゆえに個人的にはマト1の方が好き。マト4も改めて聞いてみると“眠い”という感じはしないが、マト1と比べるとガツンというインパクトに欠ける。

ちなみに82年再発UKモノ盤(マト5/6)も聞いてみたが、基本的な音の傾向はマト4/4と同じだった。82年日本モノ盤は今手元にないので聞けない。

先述の、Rubber Soulマト1は「コンプレッサーをかけ過ぎで、音が濁っている、不明瞭である」という指摘に関しては、今回聞き直した限りでは、一体どの部分を指して言っているのか、理解できなかった。

(これに関しては、正直、ホフマンが基本的にリミッター/コンプレッサーを使用しないエンジニアなので、掲示板に書き込む面々も、自然とその神聖なる?ホフマン教に背かないような書き込みをするようになっているのでは、と思える節もある。また、そういう場では敢えて反対意見を書き込む人が少ないものだ、ということにも留意すべきだと思っている。)

ということで、Rubber Soulのラウドカットは都市伝説ではなく、実在する。果たして、(毎回ここで言っているけど)9月発売のモノ盤CDではどんな音が鳴っているのだろう? 理屈で言えば、マト1よりはマト4に近い感じだろうし、更に言えば、それよりももっと82年日本モノ盤に近い音なのではないかと思う。