David Bowie: "Heroes" RCA CD comparison: West Germany press vs. Japan press

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毎年のことだが年末になると組合が面白い商材を投下してくれる。ビジネス的には当然のことなのかもしれないが、これがありがたい。私にとってはもはや恒例行事というか、個人的お約束というか、毎年dbのこのRCAシリーズにどこかの店舗でお目にかかれる。もはやRCA盤を聞くことを求めるリスナーも少ないのかもしれないし、自分自身それほどこだわっているわけでもないが、まーなんというか(長年コレクトしている人ならそうなんじゃないかと思うのだが)手にしてみたかったブツはそこそこ入手済みであって、このくらいのものじゃないと購買意欲が刺激されないというか、探して買うという行為のそのプロセス自体に楽しさを感じられないというか、そんな感じのところにこれです。

 

で久しぶりに比較みたいなことも可能な状況で、まずは掲示板のdbご意見番karmaman氏のpdfから。下のような感じで、この波形だけ見ると、ドイツプレスは日本プレスよりコンプきつめということでいいんでしょうか。あるいは単に入力レベルが大きめなのか。いずれせにせよ、生耳での感触からするとそれほど音量に大きな差はない。波形を根拠にするならやっぱり自分でやってみないとダメか。w

 

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Wave form comparison provided by karmaman

で上のpdfの「判決」のところを見ると、ジャパンプレスはbrighter(明るめ)とある。トレブリーとも言えるのか。高周波数帯域強調気味みたいな。聞いてみると、実際その通りの音像。また、ジャパンプレスは確かに1曲目"Beauty and the beast"の頭がカットされている。無用なノイズと判断されたか。日本盤LPではどうだったのだろう。と思ってRVP-6243を聞いてみたら、同じくそこは入っていない。ということは、日本流通盤CDとして意識的にそこは削除されたんでしょう。CDとLPの間に齟齬があると製品品質管理の顧客対応の面でめんどくさい話にもなりかねないので。日本向けマスターにその音が入っているかどうかは知らない。

 

で?

 

そう、で、どうなのかを問いたい。というか自問自答だなこれは。ジャパンプレス明るめ、ドイツプレスは、より太めのサウンド、ということなんだけれども、つまりは、ホフマン掲示板的にいうとドイツプレスの方が好ましいということになるんだけれども、なんというかな、個人的にはこの前ここに書いたケイト・ブッシュのHounds of Loveの比較を思い出す。audiophile的な良さが真なのか、という。ま、当然そんなわけはなく、リスナー体験として自分により豊かなものをもたらす音、みたいなものがその人に「こっちの方がいいかな」という感覚をもたらすんじゃないのか、という、そういう点からすると個人的にはジャパンプレスは捨てがたい。

 

KBの時もそうだったんだけれど、曲による。今回はLPでいうA面、これはドイツプレスの方がいいかも。けど、早4曲目、Sons of the silent ageのシンセサイザー(でいいのかな)、これ。私の頭の中にある"Heroes"というアルバムはこれ。特にSons ...の最後、アウトロのところで残響する数秒のシンセサイザーの音。それがこのアルバムの記憶を決定づけている。そこはジャパンプレスだね。なので、そこから先はずっとジャパンプレスの方が私の脳に訴えかけてくるものが多いというか強いというか。

 

高周波帯域強めになるとそこが当然耳に届きやすくなるわけで、そのバランスからするとミッドレンジが弱めになり実体感が不足してくる。のだが、それによって生じるこの浮遊感が、またこのアルバムの神秘性に貢献しているような。そしてそれがはるか昔にこのアルバムを聴いていた頃の記憶に繋がっているとしたら。「あの頃、クラフトワークとか聴いてたな」みたいなことも含めて。

 

とここまで書きながらRVP-6243を聴いていて思ったのは、いやヴァイナルはやはりいい。どちらのCD盤よりも全然いい。音像が別次元だねこれは。日本盤だからダブマスターなんだろうけれども、そこを踏まえてもなお、RCA盤CDよりおすすめできる(そっちもダブマスターか)。ノイズに関して言えばUK盤vinylよりも全然クリーン。ま個体差はあるが、多分これが一番エコノミカルなんでしょうね。ターンテーブルを持っている人限定にはなるが。