Beatles: "For Sale" Mono Remaster LP

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ネットでビートルズのネタをあれこれ見ていたら、今回のモノ盤についてのインプレなどに出くわした。
が、どうも自分が聞いた印象とは違う(解像度に劣る? 鮮度に劣る? ん~~~?)。
ということで、あまり気がすすまなかったがオリジナル盤と聞き比べなどしてみた。
(写真:左がニュー、右がオリジナル)

ご覧の通り、Beatles For Saleです。

このタイトル、個人的にはビー史上最高のするめアルバム。聞けば聞くほど、発見というか気付きがあり、聞き所が増える1枚。他の人がどう言っているかはまったく関知しないが、私にとってFor SaleはSweetheart of the Rodeoに先駆けること4年の堂々たるカントリー・ロックアルバム。というかロックンロール自体、カントリーっぽくもあるわけで、まあ、その辺の定義はつきつめるとその分ぼやけるわけですが。

で、更に言うと、For Saleはジョージのギターアルバム。グレッチ(テネシアンですか)によるプレーがこれでもかと楽しめる1枚。となると、聞き所もそこに集約されていくわけなのですが、正直、そいういう意味ではこのアルバムはモノ盤よりもステレオ盤のほうにより惹かれるかも。

まあそういう前提で改めて聞いてみました。

で、最初に思い出したのは、オリ盤はチューブカット、新盤はソリッドステートだということ。
そして一聴して思ったのが、新盤はSSなのに、音のトーナリティがオリ盤に非常に近いということ。
ただし、オリ盤はトレブル寄り、新盤はよりスペクトラムがゆったりめな感じ。

チューブカットではボーカルの焦点が広めに感じられることが多いが、トレブル寄りであることと、そして恐らくはコンプレッションが効いていることもあってか、オリ盤のボーカルのほうが"削ぎ落とされた"感がある。

新盤では鋭く飛び出てくるような印象はなく、声のトーンがナチュラル。なのでむしろこちらのほうがリアリティがある。つまり、人間らしい声、生声、という意味で。

なので、たとえば"I'm a loser"の出だし、ジョンのこぶしまわしが新盤のほうがより印象深い。微妙なニュアンス、表現がより明確に伝わってくる感じ。そしてその後の主旋律もバックの演奏に埋没することなく、際立つ。オリ盤はリバーブが多めか。コンプレッションのせいか。新盤ではよりジョンの生声に近く、歌っている姿を想像できるような感じ。

次の"Baby's in black"ではジョージのギターの表現力に注目。ベンディング(チョーキング)かと思い調べたら、テネシアンにはトレモロ(ビングズビーですか)がついているんだね。曲中のギターソロの一番最後、ベンディング効果の微妙なニュアンスが新盤ではよくわかる。オリ盤ではへたすると音がにごったか、くらいの印象。汗;;

"Words of love"でのギターのトーンも新盤のほうがナチュラル。しかし、トレブル方向のオリ盤のこの夏に蝉が鳴いているかのようなつきささるギター音のほうが好きと言えば好き。

"Every little thing"はオリ盤のほうがインパクトはある。が、新盤を聞いてみると低音方向へのスペクトラムが聴覚上広めかな。ティンパニでしたっけ、これの沈み込む音の感じがよりナチュラル。もしかして最低音部にピアノも重ねてあるのか、とも思った。

そして"I don't wanna ..."だが、このアルバムのB面では"Eight days..."を除くとやっぱりこれが突出しているかなと。新盤での聞き所は、曲の後半、間奏の後からの部分。バンドとしての演奏力でどんどんと曲を盛り上げていく表現力というか力技というか、ぐぐっと音数が増えるところ。これは新盤でよりはっきりと感じ取れる。オリ盤ではコンプがかかっているのか、その分、熱さはあるものの、均質というか音の壁というかシーツ・オブ・サウンドというか、そんな印象でそこまでの盛り上げ感はない。

ほぼ同じことが最終曲"Everybody's ..."にも言える。オリ盤では最後まで音の壁状態で、ジョージのボーカルとギターのパフォーマンスがバンド演奏と一体化している。これはこれでいいが、新盤では3人のビートルズをバックに従えるジョージのソロパフォーマンス的ニュアンスが強まる。ある意味、このアルバムがジョージのためのギターアルバムであると(勝手に!)考えると、これは納得かつ当然の締めくくり方と言えよう。

最初にも書いたが、個人的にこのアルバムはステレオ盤のほうがいいかな~
なのだけれども、モノ盤もなかなか聞けますよ、しかもこっちも面白いですよ、と感じさせてくれたのが今回のリマスターモノ盤。そこに新しい発見がまたあったことを踏まえると、やはりこの新盤は価値ある1枚、ということになる。そして(蛇足だが)これを聞いた後にステレオの****盤を聞くと最高。