SHM-CDに対抗して(?)Gold CD-Rを試してみた

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    (ケースは残念ながらリフトアップではない。Blueのジャケは自作)


SHM-CDのタイトルが続々と店頭に登場している今日この頃だが、お値段があれではちょっと二の足を踏んでしまう。マスタリングの世代が既に手元にあるCDと同じなのに更に買い直させるとはこれいかに。既存盤との違いは円盤の素材が違う点のみなのだから、どうにも説得材料に欠ける。それを廉価版で出してくれるのであれば購買意欲も湧くが、現状の値段では経済的合理性に欠けるように思われて仕方がない。

そこで、だ。円盤の素材を変えれば音質が変わるのであれば「これはどうなのか」と試してみたのがMobil Fidelityから発売中の24kt Gold CD-R。これは通常のCD-Rと比べて特にReflectivity(反射性)に優れている。通常のシルバーのCD-RのReflectivityが67~72%なのに対し、このGold CD-Rは73~74%。ついでに、傷に強く、レコーディングパワーも低くて済む、という代物。

格安店に行けば10枚300円程度でCD-Rが買える昨今だが、このGold CD-Rは1枚735円(ディスクユニオン店頭価格)とまあこれもなんというか経済的合理性という意味ではとんでもなブツではあるが(ただしアメリカで買えば1枚250円程度)、SHM-CDを買い直すよりはマシだろう、と自分を納得させて購入し、いざ焼いてみた。MaciTunesで。

まずトライしたタイトルはJoni MitchellのBlue。すると・・・、意外にもこれが凄い。夜と昼ほど違うとは言わないが、耳がいい人が聞けば実際そのくらい違うはず。この違いに気付いてしまうともう後には戻れないくらいな感じ。

通常盤ではたとえばCareyやCaliforniaやRiverなどでJoniの声がかすれ気味だったりざらついていたり、あるいは耳に刺さる感じすらするのが、Gold CD-Rで聞くとこれが艶やかでふくよか、滑らかになる。奥行き感や広がり感までもが向上したように聞こえ、透明感というか臨場感も増す感じ(これってSHM-CDの宣伝文句そのものだったりしまいか?)。*なお、ここでいう「通常盤」とはデジタルリマスターと名打つ前の、最初期のバージョン。

Blueのサビの部分“teach my feet to fly”の“flaaaaaaay”のところなど、もう聞いている自分が冬空の彼方まで吸い込まれていきそうになる。対してCDの方は声の張りのパワーだけで歌っている感じで、ピアノの打音もより金属的。またCase of Youの場合、通常CDはやはりトレブルがキツい。極端に言うなら耳に痛い感じがして途中で曲を止めたくなるほど。だがGold CD-RはしなやかでJoniの声にも艶がある。

ここで普通のCD-R(TDKのパッケージにLife on Recordと記載のある白ラベルのもの。10枚パックで780円くらい)とも比べてみた。するとこれもまた通常CDとは微かに違うように聞こえる。順番をつけるならCD→CD-R→Gold CD-Rの順番で音のトレブルのキツさが収まり艶やかになる。簡単に言えばアナログのような柔らかい音に近づいていく感じ。この3つの比較ではCDが最も聞きたくない音でGold CD-Rは逆にいつまでももっと聞いていたくなる音。白ラベルCD-Rも思っていたよりは悪くはない。ただし音の印象はGold CD-Rより硬めで、CDとの差はそれほど大きくはない。(心理的な影響もあるのか?)

CDとCD-Rでは構造上の相違があるわけだが、ただし下記リンク先の過去記事によれば、CDとCD-Rのバイナリデータは100%一致し得るらしい。同時に、それでもなお再生機器によっては音の印象が変わったように聞こえることもある、とされている。

バイナリデータが完全に同じならば(今回はそこまで検証していないが)違うのは盤の素材のみ。そしてCD-R盤の素材によって音が変わるのならば、恐らくCDの場合も素材の違いに応じて音が変わるはず。つまり、SHM-CDも音の印象はやはり変わるのだろうと予想できる(ただしGold CD-Rが特殊なのは反射層、で、SHM-CDはポリカ部分ではあるわけだが)。

例のHoffman掲示板でもSHM-CDに関しては賛否両論で、結局は判断はその人次第という感じ。優秀なマスタリングのCDなら音質アップが見込まれるが、そうじゃないCDはやっぱり何をやってもダメ、という(ごもっともな?)結論。

音の印象が変わる理由についてだが、一説にはCDの読み取りはレーザーで行っているが、実際の所この読み取り工程はアナログだからということらしい(レーザー光線そのものはデジタルではないetc.)。で、アナログなのでレーザーが透過するCD盤の素材によって音質が変わるのだと。先の記事で取り上げた「CDプレーヤーを3点支持にすると音質が変化する」という話もそれ故なのか(違うか)。

で、個人的に思うのは、だったらSHM-CD-Rを発売してくれればいいんじゃん、ということ。逆に言えばSHM-CDはMobile FidelityのGold CD-Rで用は済むのでいらない、と。なぜなら宣伝文句を読む限り、得られる効果はGold CD-Rで得られる効果とほぼ同じ傾向だから。

それを踏まえてのことかは分からないが、最近Sonyが売り出したBlu-spec CDはCDのスタンパーのカッティング段階の精度を上げたものだとか。ということはCD-Rでは真似できないことになる。

またカッティングし直しているのだから必然的に既存のスタンパーの再使用ではないわけで(再使用の場合、スタンパーの劣化により音質が低下する傾向があるとされる。ゆえに「再発盤」は初期プレス盤よりも音質が劣る、とな)、となると厳密な意味で言えばマスタリングも異なることになる。もしかして使用する機材がバージョンアップしていれば、その分の音質改善も期待できる。

ただし最新デジタルリマスタリング=音質改善ではないわけだが。
果たしてこちらの音はいかほどのものなのか、気になるね。

http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081118/sme.htm
http://www.blu-speccd.jp/lineup.html