インタビューに応えたのは、デイビッド・ハント。彼はかつてのF1チャンピオン、ジェイムズ・ハントの弟で、過去16年にわたり「チーム・ロータス」の権利を管理してきた人物。
この問題の構図としては、
1 プロトン(=グループ・ロータス)
2 トニー・フェルナンデス(今年F1を闘ったロータスのオーナー)
3 デイビッド・ハント(チーム・ロータスの元権利所有者)
がいて、現在は1と2が「チーム・ロータス」という名称の使用権を巡って争っている、という形。
1 プロトン(=グループ・ロータス)
2 トニー・フェルナンデス(今年F1を闘ったロータスのオーナー)
3 デイビッド・ハント(チーム・ロータスの元権利所有者)
がいて、現在は1と2が「チーム・ロータス」という名称の使用権を巡って争っている、という形。
1は「グループ・ロータス」に「チーム・ロータス」が含まれないことを知らずに「グループ・ロータス」の権利を買った。2は今年の参戦にあたり1から「ロータス」の名称使用権利を得た。しかしシーズン終盤になり、2は3から「チーム・ロータス」の名称を買い取り、来年から「チーム・ロータス」を名乗ると宣言。すると突然、1が「それは無効」と一方的に宣言し、しかも1はルノーのメインスポンサーとなり「ロータス・ルノー」が誕生。一方の2も、来季からエンジンをルノーにしたため、こちらも「ロータス・ルノー」という状況に。
この状況に対し、話を一番よく分かっている人物であるハントさんが、今回初めて口を開いた、とそういうことになっています。
では長いですが、どうぞ。
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<ピーター・ウインザー氏による前書き>
マレーシア人のトニー・フェルナンデスと彼のパートナーが2010年シーズンに向けてF1参戦権を獲得した際、彼らはロータスの名称をF1に復活させられないかと考えていた。ただし、彼がライセンス契約を結んだ相手はデイビッド・ハントではなく、グループ・ロータスの(マレーシアの)オーナー、プロトンだった。確かにチーム・ロータスの知的財産権(ブランド、商標、ロゴ、歴史etc.)を全く利用することなく“ロータス”としてレースを走ることは可能ではあるものの、そのやり方はあまり賢いものではなかった(1990年以前のロータスの華やかな歴史とチーム・ロータスという名称が世界中に響き渡っていることを踏まえれば尚更)。
マレーシア人のトニー・フェルナンデスと彼のパートナーが2010年シーズンに向けてF1参戦権を獲得した際、彼らはロータスの名称をF1に復活させられないかと考えていた。ただし、彼がライセンス契約を結んだ相手はデイビッド・ハントではなく、グループ・ロータスの(マレーシアの)オーナー、プロトンだった。確かにチーム・ロータスの知的財産権(ブランド、商標、ロゴ、歴史etc.)を全く利用することなく“ロータス”としてレースを走ることは可能ではあるものの、そのやり方はあまり賢いものではなかった(1990年以前のロータスの華やかな歴史とチーム・ロータスという名称が世界中に響き渡っていることを踏まえれば尚更)。
それゆえ、今年のシンガポールGP直前にフェルナンデスがようやくハントとの契約にサインし、2011年から“チーム・ロータス”としてロータス・レーシングの活動を続けていく、と発表された時、これを耳にしたF1関係者は誰もが嬉しく感じていた(と私は思っている)。私としても本来のロゴが復活するのが楽しみだったし、また、マイク・ガスコインをはじめチームの面々は誰もが、ロータスというマーケティング的に大きな可能性を持つ名称がチームを(その名にふさわしい)もっと上位のグリッドへと導いてくれるかもしれない、と確信していた。
しかし今となってはそうした期待は過剰なものでしかなかったように思える。グループ・ロータスはフェルナンデスと彼の会社相手に訴訟を起こし、フェルナンデスのチームとは無関係の立場でF1界に挑むべく、やたらに目につく行動を取り続けている。一方のフェルナンデスはといえば、ブラジルGPの期間中、メディアが群がってくることを嫌ってバリからツイートし続けていた。そこで私はデイビッド・ハントに電話を掛けてみた。この件について彼がまだメディアに一度も口を開いていないことを知っていたからだ。意外にも、デイビッドは積極的な態度で、こう話してくれた。「ブロガーやジャーナリストたちの情報源がいい加減かつ誤解だらけの発言のせいで起こった今回の混乱にはうんざり」、と彼。「いいかげんに白黒はっきりさせて、みんながもっとしっかり状況を把握できるようにするべき時だ」。
彼が説明してくれた状況は私の想像を遥かに超えて相当に酷いものだった。従ってここでは彼との会話全文を再現しておきたい。要約してしまうと、問題の複雑さが正しく伝わらない可能性があるので。
●独占インタビュー<その1>
Peter Windsor(以下PW):シンガポールでの記者会見ではチーム・ロータスが遂にF1に戻ってくると発表されました。ところがレース翌日、グループ・ロータスが、つまりプロトンですけど、彼らは「我々がこのブランド(チーム・ロータス)の所有者であり、これを守るために必要なあらゆる手段を講じる」と宣言したわけです。また、彼らは「1994年まで、グループ・ロータスとチーム・ロータスは同一の所有グループが管理していた」とも言いました。管理者も共通だったと。そしてあなたが所有しているチーム・ロータスは一度もレースしておらず、あなたの所有権は無効だとも言いました。これはどういうことなのですか?
Peter Windsor(以下PW):シンガポールでの記者会見ではチーム・ロータスが遂にF1に戻ってくると発表されました。ところがレース翌日、グループ・ロータスが、つまりプロトンですけど、彼らは「我々がこのブランド(チーム・ロータス)の所有者であり、これを守るために必要なあらゆる手段を講じる」と宣言したわけです。また、彼らは「1994年まで、グループ・ロータスとチーム・ロータスは同一の所有グループが管理していた」とも言いました。管理者も共通だったと。そしてあなたが所有しているチーム・ロータスは一度もレースしておらず、あなたの所有権は無効だとも言いました。これはどういうことなのですか?
David Hunt(以下DH):あれには本当に腹が立った。私からしてみれば、あれは私への侮辱だからね。彼らが言っているのはつまり私はこの16年間ずっとウソをついていた、ということだ。だが彼らの主張の全てはナンセンスだ。もしチーム・ロータスが共通の所有者の支配下にあったというのなら、いったいどうやってチャップマン一族は1991年にチームをピーター・コリンズに売却できたんだい? なぜ、コリンズの時代にグループ・ロータスはロータスF1の第三者的スポンサーになっていたんだい? そして、管財人がチームを私と私のパートナーに売却した際、なぜ彼らは黙って見ていたんだ? しかも、その手続きはイギリス高裁の下で進められたんだよ。そうした手順を踏んだにも関わらず、私たちがチームを買収してから2~3カ月の間、「実際には私たちがチーム・ロータスという名称を所有していないのではないか?」という噂が流れてね。当然、グループ・ロータスにとってこれは由々しき問題だったし、私たちにとっても頭痛の種になりかねなかった。それでグループはこの問題にケリをつけるため、私たちを含め、チーム・ロータスの財産に何らかの関心を持つと思われる関係者全員に手紙を送付したんだ。チャップマン一族とコリンズにもだ。彼らは、「自らが所有権を有していると思う者は、書面でそれを表明されたし」、と伝えた。彼らが受け取った唯一の返信は私たちからのものだった。それで私たちの弁護士が、「われわれが所有権の全てを有している」とグループ・ロータスに伝えた。グループは私たちにお礼を述べ、手紙を送った全員にもう一度コメントを求め、その後、私たちを会議に招いたんだ。お互いが一緒に仕事をしていけるように、とね。彼らはグループとして、私たちはチームとして。ちょうどチャップマン一族とコリンズの時代のように。
この間、グループ側が「自分たちはチーム・ロータスの財産を持っていると考えている」などと口にしたことは一度もなかったし、その時から今年のシンガポールGPの翌日までの間、私が関知しているところでは、私たちがチーム・ロータスを所有していないなどと彼らが示唆したことなんて一度もない。だから、今になってグループが「チーム・ロータスをずっと所有してきた」と主張するなんて、とんでもない妄想でしかない。
それから私たち自身が所有権を保持していた期間中、1994年には2度レースも走っている。日本とオーストラリアでね。だからグループの指摘はそもそも完全に間違っているんだ。ミカ・サロにF1デビュー戦のチャンスを与えたのだって私たちなんだよ!
事実は、グループ・ロータスはこれまで一度もF1で闘ったことがないし、一度もF1カーを製造したこともない。また、一度もチーム・ロータスを所有したこともない。これまで彼らはずっと別の企業体だった。F1では普通のことだし、世間的にもよくあることだ。コリン・チャップマンはいつも、レースチームに影響するような保険契約や突発的問題からロータス・カーズを守りたいと思っていたんだ。もちろん、そういう風に考える人間は昔も今も彼だけじゃない。
(<その2>に続く)